ユリアナさんやアマリアさんの足が取れちゃった時、ニコラさんは自分がゴブリンを見つけられなかったのが悪いんだって言ってたでしょ。
それなのに今回も隠れてたゴブリンを見つけられなかったもんだから、すっごくショックだったみたい。
だから青いお顔でぶるぶる震えてるそんなニコラさんを見て、僕もどうしようどうしようってあたふたしてたんだけど、
「いやいや、あのゴブリンを見つけるのは俺でも無理だよ」
バリアンさんが軽い感じでそう言ったもんだから、ニコラさんはちょっとびっくりしたお顔になってほんと? って聞いたんだよ。
「高ランク冒険者のバリアンさんでも、見つける事ができなかったのですか」
「ああ、あれは完全に逃げに徹してたからな。ああいうのを見つけるのはかなり難しいんだ」
バリアンさんはね、さっき僕たちがやっつけたゴブリンはこっちを待ち伏せしてたんじゃなくって、多分僕たちから逃げるために隠れてたんじゃないかなって。
それにね、そういう逃げるために隠れてるゴブリンは、こっちを襲おうとしてるのよりすごく見つけにくいんだよって教えてくれたんだ。。
「殺気が無い上に、とにかく見つからないようにと向こうも必死に息をひそめているだろ? お嬢ちゃんがダメなんじゃなく、それを簡単に見つけるこの人がすごいんだよ」
「いやいや、いくらなんでも、何のヒントも無くやり過ごそうとしているゴブリンを見つける事は俺でも無理だぞ」
さっきお父さん、何かに気が付いて周りを見てたでしょ。
あれはね、ゴブリンが通った後を見つけたから、どっちに向かったのかなぁって周りを見てたんだって。
「うまくごまかしてはいたけど、結構な数が通った痕跡があったからな。退治しておかないとダメだろうと思ったんだ」
「なるほど。だから隠れているゴブリンを見つける事ができたんですね」
僕たちの中ではニコラさんたちが一番弱いでしょ?
バリアンさんは森を歩いてる時、ずっとニコラさんたちの近くにいて守っててくれたもんだから、ゴブリンたちが通った後に気が付かなかったんだってさ。
「俺の近くにいたお嬢ちゃんたちじゃその痕跡に気が付けるはずも無いんだから、やっぱりゴブリンに気付けなかったのも仕方ないって事だよ」
「でも、私たちの近くにいたルディーン君やキャリーナちゃんたちも気付いてましたよ? ならやっぱり、その痕跡に気付かないのは私が……」
「ちがうよ! 私だって、お父さんが最初のゴブリンを倒すまで気付いてなかったもん」
「うん。僕もゴブリンの足跡とか、見てないよ」
ニコラさんがやっぱり自分が悪いって言い出したもんだから、それを聞いた僕とキャリーナ姉ちゃんは気が付いてなんかいなかったよって教えてあげたんだ。
そしたらさ、ニコラさんはそんなはずないよって。
「ルディーン君はゴブリンに出会う前に、この先に何かいるっていおうとしてましたよね? それにキャリーナちゃんだってカールフェルトさんがゴブリンを倒した後、すぐに弓で他のゴブリンに攻撃してたじゃないですか」
「それは、お父さんが急に周りの確認をしたからだよ」
「うん。何にもなかったら、あんなことするはずないもん。だから僕もその時、お父さんが歩いてく方になんかいないかなって魔法を使ったから解ったんだ」
森で狩りをする時はね、先頭を歩いてる人がなんかおかしいぞって態度を取ったらいつでも動けるようにしとかないとダメなんだ。
だってそうしとかないと、もし木の上からとかから魔物が襲ってきたら危ないでしょ?
僕とキャリーナ姉ちゃんはね、いつもとおんなじ事をやってただけだから、別にゴブリンの足跡に気が付いてたわけじゃないんだよってニコラさんに教えてあげたんだ。
「それにさっきも、うまく偽装されていたと言っただろう? あれを見つけられるのは俺かシーラ、かろうじてディックが見つけられるかどうかと言ったところだろうな」
「ええ。魔物や動物と違って、亜人は人に近い知恵を持っているから痕跡を消しながら移動するもの。かなりの経験を積まないと、移動した痕跡を見つけるのは難しいと私も思うわよ」
それにね、お父さんとお母さんがゴブリンの歩いた跡を見つけるのは僕たち兄弟でも多分無理だよって。
だからそれを聞いたニコラさんは、ちょびっとだけだけど、ほっとしたお顔をしたんだ。
「あのぉ、一つ聞いていいですか?」
ニコラさんがちょびっとだけ元気になったのを見て僕たちもほっとしてたらね、ユリアナさんがそぉっと手をあげて質問してきたんだ。
「ん? なにを聞きたいんだ?」
「隠れているゴブリンを見つけるコツとか、あるんですか?」
「あっ、それは私も聞きたいです」
ユリアナさんとアマリアさんはね、どうやったら隠れてるゴブリンを見つけられるの? って聞いてきたんだよ。
そしたらお父さんはちょっとだけ考えた後に、こう答えたんだ。
「そうだなぁ。ゴブリンは人の子供くらいの大きさしかないとはいえ、それでもそこそこの大きさはあるだろ?」
「はい」
「だからその体を隠せる草むらとなると、それ相応の大きさがいるんだ」
おっきな木があればその陰に隠れる事もできるけど、それだとそんなにいっぱいは隠れられないでしょ?
冒険者は何人かで行動するから、そういうとこに隠れるのは今日みたいにこっちから逃げたい時なんだって。
だから隠れてこっちに襲い掛かれるようなおっきな草むらに近づかなければ、ゴブリンに奇襲される事は無いんだよってお父さんは言うんだ。
「そっか。隠れられそうなところに近づかなければいいんですね」
「あっ、でもこの辺りみたいに周りがすべてゴブリンが隠れられるほどの高さがある草ばかりの場所もありますよ。その場合はどうしたらいいんですか?」
確かに、こんな森の奥の方まで来ると周りは草ばっかりなんだよね。
だからユリアナさんは、こういうとこに来た時はどうしたらいいの? って聞いたんだよ。
そしたらそれを聞いたお父さんは、ちょっと苦笑い。
「そもそも、こんな森の奥まで分け入る事ができる実力があれば、さっきバリアンさんが言ってた通りゴブリンの殺気で気が付く事ができるようになるんだが」
そう言うと、ひょいっと片足をあげて、そこに着けてる足装備をとんとんって叩いたんだ。
「ただ、中には気配を消すのがうまい個体もいるだろうから、例え奇襲をされてもいいように足に着ける防具には気を使う必要があるんだ」
そう言えば僕が初めてイーノックカウに来た時、隠れてるゴブリンやコボルトに襲われたら大変だから足の装備だけはちゃんとしたのを着けないとダメだよってお父さんに買ってもらったんだっけ。
お父さんはね、しっかりした足の装備さえしとけば、ゴブリンなんかこわくないんだよって言うんだよ。
「ニコラちゃんたちは実際に襲われたからよく解っているだろうけど、ゴブリンの中には武器を持った者もいる。だが、冒険者が持つ武器と違って、錆びたものや刃がかけたものばかりだからな。装備さえしっかりしたものをつけておけば奇襲をされても、危機に陥るほどのダメージを受ける事はないんだ」
「そうよ。それに万が一毒蛇に噛まれたとしても、しっかりとした足装備を付けていればその牙がとどくことはないでしょ? だから森に入る者にとって、足装備は胸や頭を守る防具以上に大切なのよ」
そんなお父さんとお母さんのお話を聞いて、そうなのかって感心したお顔でうなずくニコラさんたち。
でもね、それ以上にそうなのかってお顔をしてる人がいるんだよ。
「なるほど、この森にはいないから気が回らなかったけど、毒蛇から身を守るためにも足の装備には気を付けないといけないのか」
「いや、流石にお前クラスなら知っておかないとダメだろ」
バリアさんさんが感心したお顔でうんうん頷いてたもんだから、それを見たお父さんは呆れたお顔になりながら、はぁ〜って大きなため息をついたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ユリアナさんたちですが、ハンスお父さんの言う通り、しっかりとした足装備をしていたらいくら奇襲をされたとしても足首を飛ばされるなんて大怪我をする事は無かったんですよね。
だから今の半分奴隷のような立場になったのは、足装備を重要視しなかったからとも言えます。
ただ、そのおかげでルディーン君と出会えて普通の冒険者なんかよりかなりいい生活ができるようになったのだから、ある意味その方がよかったのかも?w